今年もそういう日が来たよvv

         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


今年の当日はというと、
実に3年振りに 週末でも日曜でもない“月曜”という平日で。

 「ということは、ホワイトデーも平日なワケだ。」
 「というか、3連休の後だけに、手作り派が多かったりして。」

  手作りかぁ、
  それって学生か、逆に夫婦ものかでないと、
  なかなか出来ないことじゃあないの?
  さあどうだろねぇ。
  総務の○○ちゃんとか、頑張るぞなんて言ってたけど。
  ああ、あの子はそういうの好きそうだしさ。
  器用だよねぇ。
  つか、マメだよね。
  時々、マドレーヌとか焼いて持って来るじゃん。
  そうそう、しかも激ウマvv

 「……でもさ、あの子って本命いるの?」
 「つか、居たとして、
  そういうのを重いって思うタイプだったら悲劇だよね?」


そうそう、咬み合ってなかったら悲惨だよねぇと。
結局のこと、手作り派は手間かけても報われなきゃあ可哀想とでも言いたいか、
平台に積まれてあったお菓子のレシピブック、
手にとって ぱらぱらっとめくってたOL風の女性客らが、
あははと笑いさざめきながら、結局は手ぶらで売り場を離れた。
そんな後ろ姿を見送って、

 「女って、ああいうところが恐ろしい。」
 「やですよ。ただのジョークですよ、ヘイさん。」
 「いいえ、綺麗な人とか持て囃されてる人を見ると、
  でも化粧が下手とか 頭は悪そうとか、必ずどっかにアラを探しますもの。」

それから、賛同する人を見つけて自分を正当化するんですよ、と。
目許を眇め、人差し指をピンと立て、
連れの金髪碧眼の美少女へ、鹿爪らしくも嘯
(うそぶ)いた猫目の少女。
二月の初めは、その直前の厳冬が嘘だったかのように暖かだったものが、
この連休は一気に逆行。
都内でも雪が降り積もり、
慣れない人らがすべって転んで、
それは大変だったという話で持ちっきり…な大人たちとは違い、

 「シチさんはやっぱりマカロンで攻めますか?」

一見ポンチョ風だが、肩から全方位へ下がったフードの下から袖も出る、
極太ニットの個性的なデザインジャケットは、
しっかり裏地もついての見た目以上に暖かいアイテム。
いやらしくはない程度に その裾からちらちらするのが、
コーデュロイのホットパンツ。
下に合わせたキャラメル色の、柄織り温熱タイツが微妙に幼げで愛らしい、
そんな赤毛のお嬢さんと向かい合うのが、
こちらも今時のいで立ち着こなす、金髪の美少女だったりし。
ジャケットこそ フードの縁取りや襟元に毛足の長いめなファーつきの、
ダウン仕込みか、そりゃあふんわりと暖かそうなアイテムを着込んでいるものの。
足元は足長なルックスがやっぱり捨てがたくってのミニスカート、
優しいドレープの利いた漆黒の、三重巻きのオーバースカート風のへ、
防寒対策だけは施したか、
やっぱり黒地のレギンスを合わせたという格好が、
そりゃあよくお似合いの。
いづれも今時風、スタイリッシュなお嬢さん方が、
仲良く向かい合っての、並んで立っていたのはといえば。
休日や放課後に遊び場にしている、Qという街の駅前モール。
10代の少女たちがターゲットだろう、
ポップな色使いのアンサンブルやら、着回しの利きそうなカットソー、
秋から流行りのチェニックに。
細い細いヒールと、
大きなドロップみたいなポップい石や、ファーでのデコもそれはキュートな、
ブーツやミュール、パンプスにサンダル。
人造パールのロングネックレスや、スイングタイプのピアスに、
奇抜な色やラメ入りのでも、
思い切って冒険出来ちゃいそうな、お手頃価格のコスメの数々。
そんなこんなが、
宝石箱をぶちまけたみたいに、あちこちの店頭に居並ぶ、
ただ身を置いているだけでも うずうずと楽しい街であり。
此処は丁度、JRの改札が間近な、
天窓式のアーケード、ガレリアの出入り口だからだろ。
ちょいとお堅い書店や文具店のお隣りに、
焼きたてパンが売りのイートインつきベーカリーが並んでいるものだから。

 「いい匂いだなぁ、お腹空きません?」
 「空いた空いた、
  久蔵殿が来たらまずは腹ごしらえしたいなぁ。」

白百合さんの綺麗な白い手がお腹のあたりを押さえて見せて、
それを見たひなげしさんが、
そのまま お道化たように“あはは”と笑えば。
やはりそちらも待ち合わせなのか、
同じくらいの年頃の、男子のグループがちらりと眸を遣る。
可愛い子たちで、しかも何だか気さくそう。
視野に入ったその最初から、関心は大ありなんだけど、
ただ、風貌があまりに華やかだから、他からも注目を集めておいでで、
下手に寄ってっては見世物となりかねぬ。
待ち人が来らばさっさとどっかに行きそうな空気だし、
所詮は高嶺の花と眺めるしかないよななんて、
当たって砕けようともしない、草食系ばかりの正午の手前。

 「昨日は雪が降ったじゃないですか。」
 「そうそう、
  電線にも積もってるのってこっちに来てから初めて観ました。」

  あ・もしかして、久蔵殿 貧血出たのかも。
  そうでしょうかね。まあ、まだ時間じゃあないんですが。

微妙に遅れている最後のお友達は、
少しくらいの遅刻じゃあメールして来ないクチ。
まま、約束したのは12時だったのでと、
時折首を伸ばしては、駅のほうを見やってた二人だったが、

 「すまん、遅れた。」
 「お…。」
 「うあ、びっくりした。」

それとは反対側からの声がして、
びくくっと肩を跳ね上げてしまった七郎次と平八、
おいおいと胸元押さえもって振り向けば。
お顔こそ見慣れた紅バラさんのそれだったが、

 「……どこのメーテルさんでしょうか。」
 「ヘイさん、例えが古いぞ。」

だって、ロシア風の毛皮帽に、
インバネス風ケープつきコートも、黒貂だろうかふっかふかな毛皮仕立て。
足元にはロングブーツと来て、
コスプレですかと問われてもしょうがないほど、この場からは浮いている。
おまけに、帽子の裾から覗く髪が、綿毛のような軽やかな金髪でもあるので、

 「わたなべまさこさんの漫画に出て来そうじゃないですか。」
 「今度はそっちでしょうか。」
 「???」

珍妙ないで立ちを指摘されている張本人へこそ、一番意味が通じてないようで。
ひょこりと小首を傾げた様子は、だがだが、
アニメのコスプレだとだけ笑って済ませるには…少々豪奢が過ぎるよう。

 「どういうカッコですよ、それ。」
 「うむ。直前まで、某大使館にいたのでな。」

都内でも指折りの、高級にして格式高い“ホテルJ”。
そこの経営陣の主家の一人娘という、こちら三木さんチの久蔵殿は、
自身の嗜むバレエとそれから、両親の連れという格好で、
時々とんでもないレベルの来賓・貴賓への、
ご挨拶の場に同席する機会も多くって。
それは凛としていて麗しい風貌や、
バレエで蓄積を積んだ賜物か、少女離れした存在感があるの、
様々な著名人からもご贔屓にあずかっており。
何かにつけ、お顔を見たいと所望されることもしばしばな、
意外な層にもファンの多いお人だったりし。

 「これはそこの夫人が、昨年末に贈ってくれたので。」

そっか、それじゃあ一度くらいは着て見せるのが礼儀か。
それでなくとも冷え込んだから、チャンスではあったよね…と。
毛皮越しにも細い肩、ポンポンと左右から叩かれて、

 「着替えは此処に。」
 「そっか、遅刻しそうだって後回しにしちゃったんだ。」
 「判った、まずは着替えましょう。」

その格好も可愛いけれど、人目を引いて仕方がないと。
いやいや、あなたたち二人だけでも十分注目浴びてましたよという、
可憐なお友達に促され。
どうせ何かしら見に行くつもりじゃああったのだし、
実はネ、以前にもパンストを伝染させたの、
履き替えさせてもらったことがしばしばという、
行きつけのブティックを、まずはと目指した3人娘。

 「お昼食べたら、スィーツの下見ですよ?」
 「ええ。」
 「……。(頷)」

だって明日はいよいよの当日。
3連休の間はそれぞれに、
ラッピングとかチョコに添える贈り物とかに費やしていたが。
前日の今日は、チョコにあたる手作りスィーツを3人一緒に手掛ける予定。
当初はマカロンをと構えていたものの、
ブラウニーも捨て難いし、
生チョコも手作りのコツを五郎兵衛さんから教わったので、
まんざら作れなくない身になった…ともなれば。

 「そっちの方が。(お洒落じゃないか?)」
 「あのあの、そういえば、
  勘兵衛様、ロールケーキをやたら褒めて下さったんで、
  スポンジ系も捨て難くって。///////////」
 「おやおや。
  甘いもの好きともなれば、今度は間口が広くて大変ですねぇ。」

かく言うゴロさんも、しっとり系がお好みなので、
実は生チョコとかケーキとか、そっちもいいなと思ってたと。
赤毛のお嬢さんもそんな本音を吐露したのが、
お昼にと入ったパスタ屋で、
アボガドとベーコンのクリームソースと、
シーフードドリア、ピザのマルガリータを分けっこして食べながら。
ふっくらダウン仕込みらしいが、表はしっかとレザーのハーフコートに、
スリムなタイトタイプのスカート、グレイのタイツとショートブーツ。
一気に足長モデルへ変身の久蔵が、
猫舌ゆえにと、
七郎次から ふうふうと冷ましてもらって取り分けていただいたの、
それでも はふはふ果敢に食べているの、あとの二人で愛でつつも。
いよいよのワクワクで一杯な、
16歳のバレンタインデー・イブをどう楽しもうかと、
気分はもうもう、真っ赤とピンクで塗り潰されての、
幸せな甘さに染まっておいでだったそうなvv





   〜Fine〜  11.02.13.


  *自分ではクッキーすら焼かないくせに、
   ガナッシュとかコアントローとか、
   ポアレとかテンパリングとかアイシングとかいう、
   お料理や製菓系の専門用語に微妙に詳しいおばさんです。
(苦笑)

   それはともかく。

   一応、バレンタインデー・イブの3人娘をvv
   当日はまずは学校がありますし、
   それぞれの別行動になるのでしょぅから、
   一気に書くにはちょっぴり無理もございまし。
   時間と気力が許せば、何かちょろっと、
   代表格の誰かさんだけ、逢瀬まで書くかもですが…。




 あ、そうそう。


  「あ、勘兵衛様。」

  「? なんだ、征樹?」

  「気の早い話ですが、
   来月のホワイトデー、
   お買い物へ行かれる折にはお声掛けてくださいましね。」

  「???」

  「おシチちゃんから、マカロン貰いましたので。」

  「………ほほぉ。」

 ヤですね、勘兵衛様へと違って義理に決まってるじゃありませんか。
 ほら、あのお3人での連名ですし、と。
 そこまで見せてもらわんと気が治まらない、年甲斐のないおっさまだとか、

  「…おや、丹羽チーフ。可愛らしいマカロンですね。」
  「ああ。ご贔屓のお嬢様からいただいた。」
  「そうですか。
   それにしても…1つ1つにでっかく書くのは手間でしたでしょうに。」
  「だよな。義理って 結構 字画も多いのにな。」

 何やってんでしょうか、久蔵殿。
 一応は兵庫せんせえとの差別化かもですが、
 どっちに手が込んでるんだか。
(笑)

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